INFORMATION

古民家を買うのが難しい事情 ~鎌倉市長谷 3,680万円~

2019.04.26 不動産情報 

「古民家風」なんていう言葉をよく耳にする昨今。

「私も古民家風の家を改装しておしゃれライフしたいな」とか、「古民家カフェをやってみたいな」なんていう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それでも、いざ不動産屋さんに足を運んでも、そうそう古民家物件に出会うことは少ないかもしれません。

今日は、そんな古民家(おしゃれな古民家に化ける前の古家も含む)を取り巻く状況について、鎌倉市長谷にある物件の事例を交えてお話してみたいと思います。

※長文になりますので、物件情報だけ見たい方は一番下までスクロールしてくださいね!

 

【ある”がんじがらめ物件”のお話】

 
不動産を購入したことのある方はご存知かと思うのですが、不動産というものは、個々にいろいろな特徴を持っており、実は、”誰にとっても完ぺきな物件はほとんどない”のです。

また、不動産を購入する人は、それぞれ、気にするポイントも違えば、気にいるポイントも違うので、多少の難がある物件でも順繰りに売れていき、市場はグルグルとまわっていくというのが不動産マーケットです。

そんな不動産マーケットにおいても、なかなかの曲者がおりまして、とにかく色んな事情がこんがらがっていて、なっかなか動けないがんじがらめになっている物件のお話。

 

➡がんじがらめポイント① 「放置状態が続き、家の痛みが激しい」

逗子葉山鎌倉といった場所は、昔から別荘として家を保有している方の多い土地です。バブル期などに別荘を購入した方が高齢になり、そこに赴くことも少なくなり、管理が行き届かなくなってしまったことで廃墟のようになってしまった別荘がテレビで取り上げられることも少なくありません。廃墟とまでいかずとも、長年空家状態になっている別荘も多くあるでしょう。

そもそも、家というのは、人が住まなくなると一気に傷んでしまうもの。貸別荘などとして人が出入りしていればある程度維持できるのですが、なかなか使わない老朽化した別荘の修繕などは気が進まないものです。

今回の物件も売主さんが高齢になり財産整理を理由に別荘を手放そうとしている事例です。
売主さんが購入されてから30年余り。ほとんど手を加えていないことから、外壁や屋根など大規模な修繕が必要な状態。

修繕するのを厭わない人であればウェルカムな物件ですが、なかなか骨の折れる仕事です。
内装だけおしゃれにして使おう!と考えている人だと、想定外の古家状態に驚いてしまうかもしれません。
でも、実際の古民家はこういう物件が少なくありません。

それでも、この物件は、ただ不便な別荘地というわけではなく、観光地としてもにぎやかで、住宅地としても人気のエリア。なんとかして再生したいものです。

ボロボロからの再生?腕がなるぜ~!!という方、是非ご一報を!!

 

➡がんじがらめポイントその②「借地契約の制約がきつい」

鎌倉界隈によくあるのですが、土地は神社や寺が持っており、売買対象は借地権と建物(借地権付建物)なんていう物件。
今回の物件は個人の地主さんですが、借地案件には注意が必要な点も多いです。

借地権付建物の場合、建物の売買や建替えの際に、地主からの承諾が必要になります。
また、地主は、借地借家法に基づき、借地上の建物の用途を制限できることから、借地権付建物を購入して、お店をやろう!宿泊施設をやろう!と思ったとしても、法律上はOKでも、借地契約上できないことがあるのです。

借地契約は公開されているものではないので、借地権付建物を検討する場合、借地契約の内容は要チェックです。
その物件を扱っている不動産屋さんに聞いてみましょう。

今回の物件は、地主さんが”居住用(別荘含む)のみ”という制限をつけているので、買主さんの使用方法が限定されてしまっています。結果、買主候補が限定され、“売れにくい物件”になってしまっています。
江ノ電の長谷駅からすぐで、宿泊施設やカフェなんかにぴったりの立地なんですが、、、誠に残念です。

また、この借地契約には、松の木と柿の木も含まれています。よって、地主さんの所有物になりますので、敷地内の松の木と柿の木は勝手に切ったりしてはいけません。(珍しい契約で驚き!)
仮に西海岸風の外観にリフォームしたくても、松の木もついてきちゃう!!という。。。
これまた難しいポイントです。

地主さんからすると、地代さえきちんともらえていれば、建物が売れても売れなくても関係ないことから、購入前に地主の考えを変えることは難しいかもしれないですね。

松の木も柿の木もいいじゃない!とりあえずコツコツ修繕しながら住んで、地主さんと気長に交渉するんだい!という方、大大歓迎ですよ~

 

➡がんじがらめポイントその③「借地権付古民家はローンを借りにくい

古民家を購入するとき、ローンがなかなかつかなくて買えないということが往々にしてあります。

さて、そもそも、金融機関はローンの貸し出しを判断する際、どういう基準で見ているのかご存知ですか?

まずは、借入れをする人の与信
収入面や貯蓄額、今まで返済が滞ったことがないかどうか(いわゆるブラックリスト!)のチェックが一般的です。
この人本当に返せるの?というチェックをするわけです。住宅ローンであれば、借入人に団信という保険に入らせて、その人がローン返済前に死んでしまったとしても、その保険金でローンが回収できるように担保したりもします。

次に、不動産の評価
住宅ローンにも不動産担保ローンにも共通することですが、金融機関は、対象物件に担保の設定をします。これは、万が一返済が滞ったときに、その不動産を売却して得られるお金でローンを回収できるようにするための措置です。そのため、その物件がいくらで売れるのかというのを計算し、その金額よりも少なく貸し出すことで、万が一のときでもローンを回収できるようにしています。

個人の収入も十分あるし、ブラックリストにも載っていない。でも古民家を購入したいと思ったのにローンの審査が通らない!というのは、主に「不動産の評価額」の部分が原因の可能性が高いです。

土地の価格(地価)というものは、年々変化していますが、評価がゼロになることはありません。
多くの金融機関は、すべての道路に割り当てられている路線価というものをベースに土地の価格を算出しています。借地権の場合、その路線の借地権割合を乗じた価格が評価額となります。

一方、建物は、ローン審査上の評価がゼロになることがあるんです!
「ええ!価値がゼロってこと?」と驚かれるかもしれません。ここで少し説明しますね。

金融機関は不動産のプロではありませんから、決められた数式に条件を当てはめて簡易的に評価をしていることが多いのです。(前述の土地も簡易評価です。)
それは、私たち不動産を購入する人が考える不動産の価値とは大きく異なっており、ローンの審査を申し込んでもなぜか快い回答をもらえないということにつながるわけです。

評価額 = 再調達価格[再調達単価×延床面積] × 残存耐用年数 ÷ 法定耐用年数という計算式。

なんだか難しく感じるかもしれませんが、大事なポイントなので1つずつ説明していきますね。

再調達価格というのは、同じ建物をもう一度建てるとした場合かかる金額
再調達単価と延床面積をかけて算出するのですが、再調達単価というのは、建物の構造ごとにおおまかに指標が決められています。例えば木造であれば12,000円/㎡。非常に単純ですが、そこに床面積をかければ、今この物件と同レベルのものを新築した場合の金額がざっと分かるということになります。100%の価値です。

しかし、建物というのは年々価値が下がっていくものなので、その減価分を耐用年数で推定するというのが式の後半部分です。

例えば、木造だと法定耐用年数は22年。
「えー!22年以上たっても使えるよ!」と思われるかもしれませんが、これは、税法上の減価償却期間に基づいている耐用年数であり、実際の使用可能年数とは大きく異なります。でも、金融機関は、不動産の詳細な評価をする時間も経験も経費もないため、この法定耐用年数を使って評価するのです。
その法定耐用年数に対し、どのくらい期間が経過しているかをみて、再調達価格(100%の評価)を減額していき、現在の価値をみるのです。

さて、今回の物件を当てはめてみましょう。
再調達単価 12,000円 × 延床面積 107.13㎡ × 残存耐用年数 -66年 ÷ 法定耐用年数 22年

なんと、-386万円 = 評価できない(ゼロ) となってしまうのです。

建物が実際にまだまだ使えたとしても、金融機関から見た担保価値はゼロ。
特別な事情があれば、もっと詳細な評価をして融資の検討をしてくれるかもしれませんが、ほとんどの場合はこの時点でお断りでしょう。
古家を購入しようとしたときにローンがつかない!の理由はここにあるのです。
(※記事の分量上、単純化してますのでご了承ください)

また、最近の動向として、個人投資家向けのローンの審査が厳しくなってきているという傾向もあります。
スルガ銀行のシェアハウス融資の問題やレオパレスの問題が影響しているようですが、そういった状況下では金融機関もなるべく問題のある物件には貸したくないという意向が働き、慎重になってしまうのです。
何度も取引している金融機関なら良いのですが、一見さんだと不動産投資の経験や理解度も分からないため、なおのこと難しいでしょう。

今回の物件でローンを借りるのはなかなか骨が折れるかもしれません。
おう!どーんとキャッシュで買うぜ!という方、是非ご連絡を。

 

➡がんじがらめポイントその④「建て替えが難しい」

前述(その②)記載のとおり、借地権付建物を建て替える場合には地主の承諾が必要となります。
承諾してくれれば問題ないのですが、場合によっては承諾料を取られることもあります。
よって、借地権付建物の場合、既存の建物のまま使うことが多いように思います。

 「承諾料払ってもいいから地主に建替えの承諾もらって建て替えるよ。場所も気に入ったし。」

そうですね。普通の土地であればそれもできるかもしれません。
でも、またここで、がんじがらめポイントが発生してしまうのです。

建築基準法では、一敷地一建築物の原則があります。

この「敷地」というのは、不動産登記上の1筆とは異なり、複数筆に1つの建物が建っていることもありますし、1筆に複数の建物が建っていることもありますが、1つの「敷地」に建てられる建物は1つになります。
1つの敷地に複数の建物を建てる場合には、用途上不可分であることが求められ、例えば、家屋と車庫など、分離してしまうと意味をなさない建物でなくてはなりません。

建物を建てる際には役所に赴き、建築確認というものを取得します。
その際に、建築予定の建物を建てる「敷地」を明確にしなくてはなりません。
その敷地が、建築基準法上の要件(4m以上の道路に2m以上接していること)を満たしていれば、確認申請に対し許可が下りるのです。

借地の場合、借地契約のなかで定められている借地権境界の範囲が建築基準法でいう一敷地となります。

さて、今回の物件を見てみましょう。
この物件は、1筆の土地に5つの建物が存在しています。これ自体は問題ではありません。
借地案件になるので、借地権境界の範囲が敷地になるはずですが、実は、借地契約が古く明確にはなっていません。
占有状況から判断すると、道路に面していない部分。
下の写真。対象物件は左奥なんですが、この道路に見える部分は私有地(本物件と同じ筆の土地)なんです。
これでは建築基準法上の要件を満たせません。

行政や地主さんを交えた協議の中で、再建築ができるようになるかもしれませんが、現時点では、建築基準法上の要件を満たせるかどうか分からないのです。

よって、「再建築できますよ」とお約束をして売ることができず、これまた”売りにくい物件”の要素が増えてしまったという事態です。

「それでもいいから、とりあえず修繕しながら住んで、地主さんと仲良くなって、用途制限や再建築のことを交渉してみるんだ!!だからキャッシュで買うよ!!」という方がいらっしゃれば、直ちにお迎えに行きます。

 

長年不動産に携わってきた私からしても、「これは一筋縄ではいかないな。。」という物件です。

 

でも場所は絶品!!!!!

「ここまで聞いたらちょっと気になる!」「いや、是非とも私がこの物件を再生しましょう!」という方!
「誰かと一緒にだったら、やってみたいな」という方!

是非、UNIQUE HOMESまでご連絡くださいませ。


さて、やっと問題の物件のご紹介です。(遅い!)

江ノ電の長谷駅からすぐの立地。敷地の前から江ノ電の踏切が見えるくらい。このすぐ左が駅です。
線路から近いんですが、電車の音は全然気にならないんです。駅が近いのでかなり減速してるんです。駅近なのに音が気にならないなんて、びっくりです。実際、私も言われるまで気づかなかったくらいです。
長谷寺、大仏、由比ガ浜も徒歩圏内という贅沢立地です。

さて、実際見てみると…結構広々としたお庭があり、きちんと植木の手入れをすればBBQをして楽しんだりできそう!あ、松と柿はダメですよ!

今でもオーナーさんが別荘として使っている?関係で、中の写真はお見せすることができないんですが、ご要望いただければ中を見ることもできます。

【物件概要】 価格:3,680万円

所  在 鎌倉市長谷2丁目
交  通 江ノ電 長谷駅より徒歩約2分
     JR 鎌倉駅より徒歩約22分
     道のりは平坦ですので歩きやすいです。

土地面積 200.97㎡(約60.79坪)
建物面積 107.13㎡(約32.40坪)
土地権利 借地権(年間地代:380,016円)
地  目 宅地
都市計画 市街化区域
用途地域 第一種住居専用地域
建ぺい率 60%
容  積  率 200%
間  取  り 4LDK+納屋
建  物 木造スレート瓦葺2階建
築  年  数 昭和6年築
駐  車  場 無
設  備 公営水道・都市ガス・公共下水
現  況 居住中(別荘)
取引態様 一般媒介
引  渡 相談


一覧へ